元請企業はどうして下請会社の作業員の保険加入の確認や指導しなくてはならないのか?

元請企業は下請会社の保険加入はもとより、下請会社の作業員個人の保険加入の状況を確認したり、指導しなくてはなりません。

でも、元請け会社の人は「どうしてうちが下請会社や作業員の保険の加入状況まで確認しなければならないの?」と思うだろうし、下請会社の人は「どうして元請けにうちの社会保険の加入状況に対してとやかく言われなきゃならないの?」と思う人もいると思います。

どうしてそこまでしなければならないのか確認してみました。

元請企業はどうして下請会社の作業員の保険加入の確認や指導しなくてはならないのか?

国土交通省の「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」の「第2 元請企業の役割と責任」には以下のように記載されています。

元請企業は、請け負った工事の全般について、下請企業よりも広い責任や権限を持っている。この責任・権限に基づき元請企業が発注者との間で行う請負価格、工期の決定などは、下請企業の経営の健全化にも大きな影響をもたらすものであることから、下請企業の企業体質の改善について、元請企業も相応の役割を分担することが求められる。

このような観点から、元請企業はその請け負った建設工事におけるすべての下請企業に対して、適正な契約の締結、適正な施工体制の確立、雇用・労働条件の改善、福祉の充実等について指導・助言その他の援助を行うことが期待される。

とりわけ社会保険については、関係者を挙げて未加入問題への対策を進め、社会保険加入を徹底することにより、技能労働者の雇用環境の改善や不良不適格業者の排除に取り組むことが求められており、元請企業においても下請企業に対する指導等の取組を講じる必要がある。

建設労働者の雇用の改善等に関する法律(昭和51年法律第33号)においても、元方事業主は関係請負人に対して雇用保険その他建設労働者の福利厚生に関する事項等の適正な管理に関して助言、指導その他の援助を行うように努めることとされている(第8条第2項)。

出典:社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン

まとめると

  • 元請の責任と権限は工事全般に対して渡る大きなもの
  • 発注者との間で行う請負価格、工期の決定などは下請企業の経営の健全化にも影響をもたらすもの
  • 元請には下請企業の体質改善に対して役割分担を求められる
  • 元請には下請に対して、適正な契約、施工体制、労働条件、福祉ついて指導・助言することが期待される
  • 社会保険に関しては元請も下請け企業に対する指導等の取り組みを講じる必要がある

ということのようです。

したがって、

 

元請企業はどうして下請会社の作業員の保険加入の確認や指導しなくてはならないのか?

 

というと、

 

「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」に示されているから

 

ということになります。

コンプラ違反などのあやしい会社との取引は避けるべきとは思いますが、そのような会社の指導をも元請がしなければならないのはどうして?という気もします。

ガイドラインに法的強制力、法令上の根拠はあるのか?

上記の「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」ですが、ガイドラインに記載があってもそれが法的強制力があるのか?というとそんなことはありません。

ガイドラインはあくまで行政庁だけで策定されるものであり、行政庁の運用基準・行動指針。

そのため「法令上の根拠」はありません。

ですが、ガイドラインは行政庁の判断基準を示したものとなるので、裁判所や、場合によっては警察の動きにも一定程度の影響を与えるものです。

よって、法的強制力はないが、何かがあった時のために従っておくのが無難ですし、何かあった時に「ガイドラインに従っています」という砦にもなります。

おまけで建設労働者の雇用の改善等に関する法律についても確認してみた

ガイドラインに出てきていた「建設労働者の雇用の改善等に関する法律」とは1976年(昭和51年)5月27日公布、同年10月1日施行された法律です。

建設労働者については、建設生産が有期の注文生産であること、屋外作業が中心となること等に加え、実際の建設工事が複雑な下請関係のもとで小零細企業によって行われる場合が多いという日本特有の事情から、労働面で、雇用関係の不明確、雇用形態の不安定、賃金不払い及び労働災害の多発、技能労働者の不足、福祉の立ちおくれ等多くの問題がみられる。このような建設労働の実情にかんがみ、その基本的な課題である雇用関係の明確化と雇用管理体制の整備を推進し、併せて建設労働者の技能の向上及び福祉の増進のための措置を積極的に促進し、その改善を図ろうとするものである(昭和51年9月7日発職第172号)。

出典:Wikipedia

そして、第 8 条第 2 項に以下のような記述があります。

2 元方事業主は、関係請負人に対して、第五条第一項に規定する事項の適正な管理に関し助言、指導その他の援助を行うように努めなければならない。

そして、第五条第一項の内容とは以下の通り。

第五条 事業主は、建設事業(建設労働者を雇用して行うものに限る。第八条において同じ。)を行う事業所ごとに、次に掲げる事項のうち当該事業所において処理すべき事項を管理させるため、雇用管理責任者を選任しなければならない。

一 建設労働者の募集、雇入れ及び配置に関すること。

二 建設労働者の技能の向上に関すること。

三 建設労働者の職業生活上の環境の整備に関すること。

四 前三号に掲げるもののほか、建設労働者に係る雇用管理に関する事項で厚生労働省令で定めるもの

第五条第一項だけを読むと、事業主は雇用管理責任者を選任し、そのものに管理をさせなければならないということ。

それを、第 8 条第 2 項にて、元請は適正な管理に関し助言、指導その他の援助に努めなければならないとしています。

しかし、法律は参照、参照ばかりで紐づけるのが大変です。

まとめ

社会保険については未加入問題が大きく、業界全体をあげて取り組んでいかなければならないので、元請企業にもその責を負わせることで加速させたということだったのだと思います。

で、実際それは効果を出していて現在の建設業の社会保険加入率は企業別でみると97%です。

出典:建設労働者の労働者別社会保険加入割合が上昇

 

でもですよ。

本来は社会保険の加入は法令で定められているものですので、元請会社が指導するようなレベルの話ではないと思います。

きちんと行政側で管理、取り締まればよいのではないでしょうか。

コンプラ違反をしているような会社を使わざる負えない元請(どんな元請かわかりませんが)にも問題があるかもしれませんが、そもそも、コンプラ違反している会社を取り締まれば使いようがないわけですから。

2020年10月からは建設業法も改正され、建設業許可を取得するためには社会保険の加入が必須となりますが、そういった施策を講じれば自ずとコンプライアンスは保たれるのだと思います。

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