特別教育・技能講習・免許の違いを徹底解説!簡単にわかる方法
建設業や製造業などの現場で働く際、安全に作業を行うために必要な資格や教育があります。
「特別教育」「技能講習」「免許」という言葉を見聞きしたことがある方も多いのではないでしょうか?
これらの資格は、一見すると複雑で分かりづらいと感じるかもしれません。
しかし、実は作業の危険度に応じて、明確な違いがあります。
簡単に言うと、「特別教育」「技能講習」「免許」は、 特別教育 < 技能講習 < 免許 というように、ピラミッドのような上下関係で成り立っています。
つまり、上位の資格を取得していれば、その下の資格で認められている作業を行うことができます。
なぜこのような上下関係があるのでしょうか?
それは、作業内容の危険度によって、求められる知識や技能レベルが異なるためです。
例えば、クレーン運転の業務を例に考えてみましょう。
* つり上げ荷重5t以上の移動式クレーン:免許
* つり上げ荷重1t以上5t未満の移動式クレーン:技能講習
* つり上げ荷重1t未満の移動式クレーン:特別教育
このように、扱う重量が大きくなるほど、事故のリスクも高まります。
そのため、より高度な知識や技能を持つ人材を育成するために、免許や技能講習といった制度が設けられているのです。
それぞれの資格の違いを理解することは、安全で円滑な作業を行う上で非常に重要です。
ここからはそれぞれの違いについて解説していきます。
特別教育
特別教育とは、作業現場における事故や健康被害を防止するために、特定の危険または有害を伴う業務に従事する労働者に対して行われる教育です。
労働安全衛生法第59条の3では、事業者は、危険または有害な業務に労働者をつかせる場合、業務内容に応じた安全または衛生のための特別教育をあらかじめ実施することが義務付けられています。
特別教育の対象となる業務は、たとえば、フォークリフトの運転、クレーン運転、高所作業、電気工事など多岐にわたります。
これらの業務は、特殊な技能や知識を必要とし、適切な教育が実施されないと、重大な労働災害に繋がる可能性があります。
そのため、事業者は、労働者を危険な業務に従事させる前に、特別教育を実施し、安全に作業できるよう指導する必要があります。
特別教育と混同されやすいものとして、技能講習があります。
技能講習は、一定レベル以上の技能・知識を習得していることを証明する国家資格を取得するための講習であり、特別教育とは目的が異なります。
「特別教育」「安全衛生教育」は国家資格には該当しません。
労働安全衛生法では、特別教育の対象となる業務と、技能講習の対象となる業務がそれぞれ定められており、事業者は、それぞれの業務に適した教育を実施する必要があります。
代表的な特別教育
代表的な特別教育としては以下のようなものがあげられます。
- 小型車両系建設機械運転特別教育(3トン未満)
- コンクリートポンプ車運転特別教育
- エアーコンプレッサー運転特別教育
- フォークリフト運転業務従事者安全衛生教育(再教育)
- 鉄道工事特別教育
- 解体作業特別教育
- 発破作業特別教育
- 足場の組立て等作業従事者特別教育
- 高所作業車運転特別教育(10メートル未満)
- ショベル運転特別教育
- 塗装作業特別教育
- 鉄筋工作特別教育
- 防水工事特別教育
- トンネル工事特別教育
- 建築作業特別教育
- 職長・安全衛生責任者教育
- 鉄骨組立て作業特別教育
- トラック運転特別教育
- テールゲートリフターの操作の業務に係る特別教育
- 土木作業特別教育
- クレーン運転特別教育(3トン未満)
特別教育の修了証
外部の機関で特別教育を受講すると、規定の内容と時間を満たした場合に「修了証」が交付されることが一般的です。
これは、受講者が適切な教育を受けたことを証明する重要な書類となります。
一方、自社内で特別教育を実施する場合には、「修了証」の交付は必ずしも義務付けられていません。
しかし、労働安全衛生規則第38条では、特別教育を実施した場合、受講者や科目などの記録を3年間保存することが義務付けられています。
そのため、自社で特別教育を実施した場合は、「修了証」を発行するか、受講記録をしっかりと保管しておく必要があります。
特別教育と混同されがちな「技能講習」は、修了証ではなく「修了証書」が交付されます。
技能講習は、特別教育よりも専門性や危険度が高い作業を扱うため、より厳格な証明が求められます。
なお、特別教育の実施や修了証の有効期限に関する明確な規定はありません。
ただし、「職長教育」のように、法令で更新が義務付けられているものもあるため、注意が必要です。
また、「雇入時教育」など、すべての作業員が雇用時に受講すべき教育についても、記録をしっかりと残しておくことが大切です。
技能講習
技能講習は、作業現場における安全衛生の確保と労働災害の防止のために設けられた講習です。
危険を伴う作業に従事する方は、特別教育と同様に、技能講習を受講することが求められます。
具体的には、クレーンや玉掛け、フォークリフト、高所作業車などの操作、あるいはガス溶接やアーク溶接など、専門的な知識と技能が求められる業務が対象となります。
これらの業務は、一歩間違えると重大な事故に繋がりかねないため、技能講習を通じて適切な知識と技能を身につけることが重要になります。
技能講習は、労働安全衛生法に基づき、厚生労働省が認可した機関が実施しています。
講習の内容は、それぞれの業務に応じた学科と実技から構成され、修了試験に合格することで修了証が交付されます。
技能講習を受けることで、安全に対する意識向上はもちろんのこと、作業の効率性や精度の向上にも繋がります。
これは、企業の生産性向上や、労働環境の改善にも大きく貢献すると言えるでしょう。
代表的な技能講習
代表的な技能講習をいくつかご紹介します。
- 石綿作業主任者技能講習
- 鉛作業主任者技能講習
- 足場の組立て等作業主任者技能講習
- 型枠支保工の組立て等作業主任者技能講習
- 普通第一種圧力容器取扱作業主任者技能講習
- 木造建築物の組立て等作業主任者技能講習
- プレス機械作業主任者技能講習
- 鋼橋架設等作業主任者技能講習
- 酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習
- コンクリート破砕器作業主任者技能講習
- コンクリート橋架設等作業主任者技能講習
- 化学設備関係第一種圧力容器取扱作業主任者技能講習
- 乾燥設備作業主任者技能講習
- 有機溶剤作業主任者技能講習
- 鉄骨の組立て等作業主任者技能講習
- ずい道等の掘削等作業主任者技能講習
- ずい道等の覆工作業主任者技能講習
- ボイラー取扱技能講習
- 地山の掘削及び土止め支保工作業主任者技能講習
- 採石のための掘削作業主任者技能講習
- はい作業主任者技能講習
- 船内荷役作業主任者技能講習
- コンクリート造の工作物の解体等作業主任者技能講習
- 特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習
技能講習の修了証
技能講習を修了すると、「技能講習修了証」が交付されます。
この修了証は、講習を実施した登録教習機関から交付されます。
交付は、労働安全衛生法第七十六条の二によって定められており、修了者に対して必ず交付されなければなりません。
技能講習は、各地域の教習・教育機関や建設系の協会など、信頼できる機関で実施されています。
講師も、都道府県労働局長に登録された、一定の要件を満たした方が担当します。
似たような講習に「特別教育」がありますが、これは技能講習とは異なるものですので、混同しないように注意が必要です。
免許
様々な資格が存在しますが、現場で働く上で特に重要な資格として、特別教育、技能講習、そして免許が挙げられます。
技能講習では、フォークリフトやクレーンなど、特定の機械の操作や業務に必要な知識・技能を習得します。
一方、免許は、業務独占資格とも呼ばれ、免許を取得しなければその業務に就くことができません。
現場で責任者として活躍する主任技術者や監理技術者には、免許の取得が必須です。
労働安全衛生法第12条で定められた衛生管理者として、労働衛生に関する技術的事項を管理する場合も、免許が必要です。
技能講習修了者や作業主任者として働く場合でも、現場の状況によっては免許が必須となるケースもあるため、事前に確認しておきましょう。
免許の修了証
「修了証」は、主に特別教育や技能講習を修了した際に発行されるものです。
これらの講習は、労働安全衛生法に基づき、労働災害の防止や労働者の安全衛生の確保を目的として実施されています。
特別教育は、業務の内容ごとに定められた安全衛生のための知識や技能を習得させるための講習です。
一方、技能講習は、特別教育よりもさらに専門的な知識や技能を必要とする業務に従事する際に必要となる講習です。
これらに対し、「免許」は、国家試験に合格し、一定水準の専門的な技術や知識を有することを国が認めた証です。
免許は、業務独占資格として、免許を取得しなければその業務に就くことができない場合があります。
免許を取得するには、実務経験などの要件を満たし、国家試験を受験する必要があります。
修了証は、あくまで講習を修了したことを証明するものであり、免許のように国家資格を証明するものではありません。
しかし、特別教育や技能講習を受講し、修了証を取得することは、労働災害の防止や安全衛生の確保に役立ちます。
仕事の内容によっては、修了証の提示が求められる場合もあるため、大切に保管しておきましょう。
まとめ
建設現場で働くには、作業内容に応じた資格が必要になります。
資格には、「特別教育」「技能講習」「免許」の3種類があり、それぞれ取得の難易度や有効期限が異なります。
今回の記事では、それぞれの違いについて解説しました。
この記事が、資格取得の一助となれば幸いです。