工期に関する基準が作成された。4週8休が現実味を帯びてきた話
2020年10月1日施行予定の改正建設業法で「著しく短い工期による請負契約締結の禁止」が規定されます。
著しく短い工期と言っても、その基準がなければ判断することすらできないのですが、その基準が決まったようです。
その中には4週8休についても盛り込まれています。
今回は特に「建設業の週休二日(4週8休)」の実現についていろいろと考えてみました。
目次
工期に関する基準が作成された。4週8休が現実味を帯びてきた話
今回、作成された工期に関する基準の適用範囲は公共・民間問わず建設工事に関わるすべての受発注者となります。
公共工事の場合は発注者が工期を設定、民間工事の場合は発注者が受注者に希望を伝達し、受注者の提案を受け、双方合意の上で工期を決めるということになります。
「工期に関する基準」の概要
中央建設業審議会(中建審)が作成した「工期に関する基準」の概要は第一章から第六章まで以下の通り。
【第1章 総論】
【第2章 工期全般にわたって考慮すべき事項】
【第3章 工程別に考慮すべき事項】
【第4章 分野別に考慮すべき事項】
【第5章 働き方改革・生産性向上の取り組み】
【第6章 その他】
いろいろとあるわけですが、ここでは、第2章の「工期全般にわたって考慮すべき事項」に「休日・法定外労働時間(改正労働基準法に基づく法定外労働時間、建設業の担い手一人一人が週休2日〈4週8休〉を確保)」が盛り込まれているので、その内容にフォーカスしていろいろと考えてみました。
週休2日〈4週8休〉を確保するために
あくまで「案」ですが、以下の工期に関する基準(案)の週休2日に関わる項目「休日・法定外労働時間」の箇所を抜粋します。
※赤文字は私が勝手にしたものです。
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001355160.pdf
(2)休日・法定外労働時間
建設業をより魅力的な産業とするため、また、令和6年4月より改正労働基準法の時間外労働の罰則付き上限規制が建設業にも適用されることも踏まえ、建設業の働き方改革を推進する必要がある。
・法定外労働時間労働基準法における法定労働時間は、1日につき8時間、1週間につき40時間であること、また改正法施行の令和6年4月に適用される時間外労働の上限規制は、臨時的な特別の事情がある場合として労使が合意した場合であっても、上回ることの出来ない上限であることに考慮する必要がある。
また、時間外労働の上限規制の対象となる労働時間の把握に関しては、工事現場における直接作業や現場監督に要する時間のみならず、書類の作成に係る時間等も含まれるほか、厚生労働省が策定した「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を踏まえた対応が求められることにも考慮しなければならない。
・週休2日の確保
建設工事の目的物は、道路、堤防、ダム、鉄道、住宅、オフィスビルなど多岐にわたり、工事の進め方は、オフィスや鉄道など、土日の作業が望ましい工事があるように、工事内容によって千差万別である。国全体として週休2日が推進される中、建設業では長らく週休1日(4週4休)の状態が続いていたが建設現場の将来を担う若者をはじめ、建設業に携わる全ての人にとって建設業をより魅力的なものとしていくためには、他産業と同じように、建設業の担い手一人ひとりが週休2日(4週8休)を確保できるようにしていくことが重要である。
日曜のみ休みという状態が続いてきた建設業において、週休2日(4週8休)をすべての建設現場に定着させていくためには、建設業界が一丸となり、意識改革から始めなければならない。
現在多くの建設業団体が行っている4週8閉所の取組は、こうした意識改革、価値観を転換していくための有効な手段の一つであると考えられる。
また、維持工事やトンネル工事、災害からの復興工事対応など、工事の特性・状況によっては、交代勤務制による建設業の担い手一人ひとりの週休2日(4週8休)の確保が有効な手段の一つとなると考えられる。
ただし、年末年始やゴールデンウィーク、夏休み等の交通集中期間における工事規制の制約、山間部や遠方地といった地域特性、交通・旅客に対する安全配慮、災害復旧等の緊急時対応を求められる工事等においては、必ずしも4週8閉所等が適当とは限らない工事が存在することに留意しなければならない。
なお、建設業における週休2日の確保に当たっては、日給月給制の技能労働者等の処遇水準の確保に十分留意し、労務費その他の必要経費に係る見直し等の効果が確実に行き渡るよう、適切な賃金水準の確保等を図ることが必要である。
どうでしょうか?
私は割としっかりとした内容だなぁ、と感じました。
休日・法定外労働時間の内容に対して思うところ
労働時間には直接の工事だけでなく、書類の作成に係る時間等も含まれることにも言及されていますし、週休2日と言っても、
- 土日作業が望ましい工事があること
- 維持工事や復興工事など、工事の特性などにより交代勤務制が有効であること
- 集中工事、緊急時対応時は4週8閉所等が適当とは限らない工事が存在すること
にも留意する必要があることも述べられています。
週休2日というと、往々にして
- そんなのできるわけがない
- 非現実的
- 何もわかってない
という声が「現場から上がってくる」ことがあるのですが、このような方針が打ち出されていて、記載もあることを知ればある程度は理解してもらえるかもしれません。
週休2日とした場合の給料は?
で、週休2日とした場合に問題視される給料についてですが、
- 日給月給制の技能労働者等の処遇水準の確保に十分留意
- 労務費その他の必要経費に係る見直し等の効果が確実に行き渡るよう、適切な賃金水準の確保等を図ること
とも書かれています。
- そんなの言うのは簡単だ
- 具体的にはどうすりゃいいんだ
という「なんでも決めてもらいたい層」からの声も聞こえてきそうですが、こういうことも考慮、配慮されている案であるというのは、ある程度ちゃんと分かっている人が作っていると思えます。
建設業は人気がない職業なのか?
で、建設業では週休1日が続いているために労働者の確保が難しくなっていることもきちんと書かれています。
この点は私もはげしく同意でして、建設業って3K(きつい、きたない、きけん)ばかりのイメージがありますが、やっぱり体を使って物を作る面白さってのもあると思うのです。
例えば、運動部あがりの若者の中には
「デスクワークつまらねぇな」
「もっと体を使ってバリバリ働きたいんだよね」
「もっと筋肉付けたいんだよね」
と思っている人もいたり、いなかったりすると思うんです。
でも、そういった人材にアプローチするには週休1日ってかなりの足かせになるわけです。
がっつり働いて、しっかり休む、というメリハリのある生活を送ることができれば建設業だって(という言い方もあれですが)結構魅力的な職業だと思います。
大成建設の「地図に残る仕事」というメッセージも結構刺さった人もいたのでは?と思います。
だからこそ、まずは待遇が他の業界と横並びにならないと話にならないですよね。
その点、今回の改正建設業法「工期に関する基準」は週休2日に切り込んでいっている(まぁ、もとは改正労働基準法から、といえますが)ので、この方向で建設業に週休2日が定着すればよいなぁ、と思います。
週休2日対して否定的な人
でも、どうして、現場の監督や職人さんの中には週休2日に対して否定的な人がいるのでしょう?
給料が下がらないで自分の自由にできる時間が増えればハッピーなのでは?と思うのですが、
- 天気に影響される職業なんだ
- とにかく間に合わないんだ
- 給料はどうするんだ
- こちとら事務みたいな仕事とは違うんだ
というような声をきくことがあります。
1から3は今回の改正法で考慮されているので、簡単ではないにしてもクリアできそうな気がします。
ただ、4についてはよく言えば「プライド」、悪く言えば「現状への固執と柔軟性の欠如」によるものとなるので一番厄介かもしれませんね。