施工体制台帳に添付する契約書の金額は黒塗りしてよいのか?
施工体制台帳に添付する契約書について、よく聞かれる質問の一つとして「金額は黒塗りしてよいのか?」というのがあります。
今回はその黒塗りについて解説します。
目次
施工体制台帳に添付する契約書の金額は黒塗りしてよいのか?
結論から言うと
- 公共工事は黒塗りしてはダメ
- 民間工事は黒塗りしても大丈夫
となります。
公共と民間でちがう理由について説明します。
建設業法施行規則で規定されている
「公共工事がダメ」というのは建設業法施行規則で以下の通り規定されています。
建設業法施行規則
(施工体制台帳の記載事項等)
第十四条の二2 施工体制台帳には、次に掲げる書類を添付しなければならない。
一 前項第二号ロの請負契約及び同項第四号ロの下請契約に係る法第十九条第一項及び第二項の規定による書面の写し(作成建設業者が注文者となつた下請契約以外の下請契約であつて、公共工事(入札契約適正化法第二条第二項に規定する公共工事をいう。第十四条の四第三項において同じ。)以外の建設工事について締結されるものに係るものにあつては、請負代金の額に係る部分を除く。)
上記の通り、公共工事以外については請負代金部分を除く、とあります。
よって、「公共工事で提出する契約書の金額部分は黒塗りしてはいけない」ということになります。
どうして金額を黒塗りしてはいけないのか?
これは適正な金額での下請契約ができているかを確認するためです。
建設業法第19条の3で、「不当に低い請負代金の禁止」が規定されています。
注文者が、自己の取引上の地位を不当に利用して、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金の額とする請負契約を請負人と締結することを禁止するものです。
実際に工事毎、下請けさん毎に一つ一つ金額を確認しているわけではないと思いますが、何かあった時(不当に低い請負代金だという申告)のエビデンスとして必要になるからです。
建設業では、下請けさんを守るための法があるわけです。
不当に低い請負代金とは?
でも、「不当に低い請負代金」と言われてもピンとこないですよね。
不当に低い請負代金とは、
取引上優越的な地位にある元請負人が、取引上の地位を不当に利用して下請負人を経済的に不当に圧迫するような取引など
のことを言います。
要は、「仕事が欲しかったら、もっと安くせいや」という話ですね。
ここで言う「取引上優越的な地位にある元請負人」とは、下請にとって大口取引先に当たる元請などが該当します。
「取引上の地位を不当に利用」については、下請代金の額の決定に当たり下請負人と十分な協議が行われたかどうかがポイントになるので、元請負人が価格を一方的に決定して取引を強要する「指値発注」なんかは引っ掛かることになりますね。
どうして金額を黒塗りしたいのか?
そもそも、どうして金額を黒塗りしたいのか、についてはさまざまな理由がありますが、やっぱり再下請けさんとの契約金額までもが元請にオープンになるのが嫌だからというのがあると思います。
別に後ろめたいことをしているわけではないですが、
「おまえのところはこれしか払ってないのか?」
なんて突っ込まれたり、
「うち(元請)への金額はぼったくりじゃないか」
といいがかりをつけられる可能性もありますし。
また、ないとは思いますが、再下請けへの金額を分析されて、足元見られる、じゃないですが、以降の契約時の金額を落とされたりするリスクだって考えられるわけですから。
そう考えると提出は「元請へ」ではなく、発注者となる役所に直接提出してもらうのが良い気もしますが、契約周りをまるっとシステム化しないと実現は難しいでしょうね。
正直なところ、「うちが下請とどのような契約したっていいでしょ?」という話なわけですが、建設業においては下請さんを守るためにも、このような法が整備されています。
ここを必要以上に拒否すると「不当に低い請負代金で下請契約しているのではないか?」と疑われても仕方がないということになりますので、注意が必要です。